第9回 2015年2月24日〜28日開催

技術立脚型経営を考える  プログラム



224日(火) 日本製造業の今後の課題

 

◆オリエンテーション 10:0012:30

 技術は経営に於いて多様性がある。つまり事業の基盤を支える“経営資源”でもあり、技術を核として事業プラットフォームを形成し対価を得るという意味で“製品”でもある。また技術間・事業間の競争が繰り広げられている状況では、標準化のためにオープン性を求められる場合があるが、一方では製品の差別化を担保するためクローズド性が要求される。その観点からは多元性を持っているとも言える。技術が持つ多様性と多言性は、技術を事業的視点でマネージすることに柔軟な発想を求めている。

MOT講座で積み上げてきた知見を披歴し本講座のオリエンテーションにしたい。

 

 許斐 義信  技術立脚型経営研究会理事長                      元慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授

 

 

◆課題提起      13:3017:00

『日本の製造業がグローバル競争に勝ち抜くための提言』 

 

1990年前後のバブル経済の崩壊と冷戦の終了は、日本市場の縮小と世界経済の急速なグローバル化をもたらした。先進国は人件費が安い新興国に製造拠点を展開し、日本はもはや高度工業製品を安い人件費で生産する国ではない。人口減少が続く日本とは逆に、人口増が続く新興国は生産拠点から巨大な市場としての位置づけが大きくなった。ここには、日本市場とは異なる多様な顧客ニーズがあるが、日本の製造業の多くは、それに適合した製品を供給できず、結果として低利益に陥った。それに加え、インターネットを始めとしたICTの高度化と普及は、新しい市場やビジネスモデルを創出するとともに、生産性を大幅に向上した。このような市場環境変化により、日本の製造業の過去の成功モデルがグローバル市場でそのまま通用する余地は少ない。グローバル化とは“非日本化”を意味する。グローバル競争を勝ち抜くには、日本的な価値観が産んだ“ものづくりの弱点”を克服しなければならない。今日、製造業に必要なことは“ものづくりのパラダイムチェンジ”と“ものづくりの本質”に立った取り組みである。本講演では、日本の製造業の弱点とそれを払しょくするための取り組み、ものづくりの本質に基づいた“儲ける”ための処方箋について述べる。

 

 青木 素直 様  三菱重工業株式会社 特別顧問

 

                               

懇談会       18:0020:00   

 自己紹介、MOTセミナー参加の抱負 等

 

 

 

225日(水) 技術の支配モデルとテクノロジー・マネジメント・マップ

 

◆課題提起      09:3012:30

『技術間競争及び世代間競争のマネジメント』

 現在、電気(自然エネルギー)をはじめとして多くの産業で代替技術が提案されている。しかし、長期的には競争技術が併存する場合もあるが、一方では特定技術に収斂する場合もある。その根本的原因を過去に起きた電子機械産業での技術間競争の帰結をMOTの観点から整理し、技術ドメインの変革で競争優位性を失ったり、コンソーシアム形式で競争技術を排除する、或いは、社会的基本ニードを背景に競争技術を排除するなど世代間交代を含む技術館競争のテーマを解析する。今回は事例として自動車産業でのエンジン技術を取り上げ、ワークショップを行い、その際に注目すべき支配モデル形成で検討すべき視点を提示する。

 

 坂巻 資敏 技術立脚型経営研究会 理事 元株式会社リコー 常務執行役員 高橋 修  技術立脚型経営研究会 理事 元富士通点株式会社 専務取締役

 許斐 義信 技術立脚型経営研究会 理事長

  

 

◆ワークショップ   13:3018:00

『テクノロジー・マネジメント・マップ 技術間競争における支配モデルの形成』

 

 革新的な開発を通じ画期的な製品を送り出している企業の特質は何か考える時、長期的な社会基盤や諸々の環境条件を斟酌し、研究・開発技術を作興して新たな価値を獲得していることではないだろうか。その方法論として多くの知見を集め、知恵を集積して将来の事業を構築するテクノロジー・ロード・マップがある。本研究会では、単なる技術予測に留まらず、だいたい代替技術間競争や支配モデル形成など、いわゆるMOT的評価軸を加え、事業戦略視点で、リスクを含むテクノロジーの将来の事業家課題をグループ討議を活用して総合的に探索する。

 


◆課題提起      19:0021:00

『内燃機関・電気自動車(HV,PHV,EV)・燃料電池車の次世代エンジン開発競争(仮題)』

 小野 昌朗 技術立脚型経営研究会 理事                       株式会社東京アールアンドデー代表取締役社長 

 

         

   

226日(木)  事業所見学及び討議

 

◆ワークショップ   09:0010:45

 ワークショップの継続&整理 発表準備

 

 ◆事業所見学    12:3015:00 (11:00 フォーリッジ発)

『基盤技術を基盤にした新製品イノベーション』

 

 技術立脚型の事業経営を行う世界で最も成功している起業のひとつであるスリーエムジャパンのCTC(カスタマーテクニカルセンター)を見学する。同センターはスリーエムのテクノロジープラットフォームをベースにしたアプリケーションとして、顧客とのワークショップを通じた実践的テクノロジーマーケティングの現場を体感する。(バス送迎を予定)

 

 スリーエムジャパン株式会社 CTCセンター長 松本 日出夫 様

 

 

◆ワークショップ   フォーリッジ着後18:00

 ワークショップ 発表 まとめ

           19:00~21:00

『テクノロジー・マネジメント・マップ 発表と討議』 

 技術立脚型経営研究会 理事&スタッフ ほか 

 

 

 

227日(金) ハイテク・ベンチャー世界戦略と知財戦略 

 

◆新規事業     09:0012:30

『世界一の製品を梃子にした事業の世界展開“日本人の素晴らしいポテンシャルおよび日本の優れた技術”』

 

 技術力を梃子にした事業戦略の障害は市場の規模にあるが、研究開発投資を行いながら世界市場でニッチでありながらも世界有数の事業力を持つに至っている。事例を紹介し、技術投資と世界市場制覇の両要素を統合した事業モデルの成立条件を検討する。

フルカラーの世界最高感度の暗視カメラ“隼”の開発およびその事業の世界展開のケーススタディにより“中小企業が世界一の製品を梃子にした日本の産業立て直しをリードするポテンシャルを有すること”を示す。このスタディは大企業における新規事業へのチャレンジを成功に導くヒントも示唆する。さらにグローバル時代を“しなやかに”かつ“したたかに”生き抜くために必須となる“日本人のポテンシャルの十分な活用”という課題について自らの経験を踏まえた提言を行う。

 

 駒村 利之 様 株式会社駒村紹介 代表取締役社長 

 

 

◆課題提起    13:3017:00

『知的財産戦略 技術・知財による事業力の強化』

 

 技術系企業が事業で勝つためには知的財産(知財)経営が必要となる。企業の競争力の源泉となる知財を創造し、それを活用することにより事業を強くする経営である。知財経営は知財の本質を認識し経営資源として重視して知財を取り込む仕組みを持つこと、技術力と知財力に基づく競争力の高い事業の創出が重要になる。企業戦略には事業戦略と全社戦略がある。事業戦略は他企業と事業において競争するための戦略で、これを支えるのが全社戦略である。全社戦略には全社の技術力と知財力を結集し新規事業を創出することが要となる。

事業戦略は事業の先読み、技術の先読み、知財の先読みの情報共有に基づき構築すること、競争力の源泉となる自社の技術、知財の強み、弱みの認識と事業化前に強みを増し、弱みを解消する知財戦略(標準化戦略も含む)が必要となる。技術、知財の弱みを解消し強めるアライアンス戦略も重要となる。事業戦略に適ったアライアンス戦略には交渉力と契約力が必要になる。これらの戦略を立案し実行するには、事業部門、技術部門、知財部門の常時の連係、融合活動が必要になる。事業競争力を高め持続、発展するためには事業の責任者が事業運営に際し、事業の全サイクルに亘って知財を活用して事業競争力を高める意識と知財部門と連携して戦略的に活動することが重要となる。本研究会では私流の事業強化の実践的な知財戦略の要諦について述べる。


 丸島 儀一 様 丸島特許事務所 所長 弁理士、金沢工業大学大学院知的創造システム専攻客員教授 

 

 

 

2月28日(土) 基盤技術を軸とした事業イノベーション

◆課題提起     09:0012:00   

『技術経営と新規産業参入への挑戦 ホンダ』 

 

 敗戦から1年2ヵ月の1946年10月、静岡県浜松市山下町に本田技術研究所は誕生した。2年後の1948年9月24日、技術研究所を継承して資本金100万円で本田技研工業株式会社が設立された。オートバイ開発に夢を託し1950年にはドリームD型を販売し事業の基礎を確立、国内の熾烈な競争から世界レースへの挑戦を果たし、1960年に本田技研工業から再び㈱本田技術研究所が独立し研究開発会社が構築された。ホンダの歴史は、独創的研究開発を担う本田技術研究所が常に事業を牽引する技術経営企業である。国策に対峙して短期の四輪車開発を実現し、CVCCエンジンや小型オートマティックトランスミッションなど、社会や顧客のニーズ解決に向けた商品を市場に送り出し、我が国最後発メーカーが今や世界の自動車企業の仲間入りをはたした。そして、1986年には基礎技術研究センターを発足し、材料やエレクトロニクスの要素研究をはじめヒューマノイド型ロボットや燃料電池車、そして、航空機産業参入に向けて事業化が展開されている。戦後に誕生したベンチャー企業が、60年余にわたって飽くなき新事業に挑戦し続けている歴史は「独立精神と共創」の理念が継続されている所以と考えている

 

 野口 満 様    (公財)埼玉県産業振興公社 コーディネーター

          元株式会社本田技術研究所 Executive Chief Engineer

 

 

◆修了式     13:3014:00

          修了証 授与