第16回 2018年8月28日〜31日に開催いたしました

テーマ 『技術経営は激動する環境変化を受けてどうあるべきか』     

 

技術立脚型経営研究会MOT研究会では、ここ3年間 テーマを「産業革命は起こるのか」と題しその発端となったドイツにおけるインダスリー4.0、米国のI o T はわが国の産業や社会にどのような変化をもたらすのか、どのような対応をすべきであるかその潮流と変化・革新を取り上げてきました。

2018年に入り、その姿が 政策レベル・産業レベル・市場レベルなどの各層において具体的な形で認識される共に、エンジニアリングチェーン・サプライチェーン・バリューチェーンの変革も進行しています。見方によれば、今までモノづくりを基軸にして発展してきた構図が徐々に進化して情報を中心とする新たな価値観を形成しつつあると考えられます。

前回のMOT研究会で変革の潮流を観察し、以下の概念図を提示し研究・論議を行いました。

研究会の論議は、インダストリー4.0、 I o T を変革の手段として捉え、産業の将来の姿・動向を再度考える機会ともなりました。

将来に向けて、サイエンス(科学)は進行することは確実です。そしてそれを形として実現させていくのは「テクノロジー(技術)」であることは首肯するところです。 しかし、わが国の最も長けた分野であり、かつフロントランナーであった「モノづくりの基軸」としてきた技術が、次第にその座を脅かされつつあることも事実です。

今回、世界の産業・社会が向かうところは、「デジタル化」「ソフト化」「ネットワーク化」であることを認識して技術経営のあり方を問いたいと考えます。その中心に位置するのは、「イノベーション」であり「それを梃子にした産業・事業の作興」であると考えます。

第16回MOT研究会にあたり、改めて技術経営の意義を再確認するとともに、副題として現在の世界中で大きな変革が予見され、かつその動向と産業の取組みが注目されているモビリティの世界を取り上げます。ソフトウエアとインターネットによって、関連する広く事業領域での情報改革・構造改革、そしてソフトウエアを研究して参りたいと思います。モノづくりの視点も加えながら「ネットワークによる生産革新・システム・アプリケーション・プロダクツ」そして「事業戦略としての知的財産」などを研究してまいります。

また、4日間の全体をより深く、実務的に研究するためにも、全参加者(当法人役員も含め)によるミーティング・シンポジウム行い皆様の英知を集めた「技術経営の本質」を論議してまいる所存です。

(技術立脚型経営研究会)

図 開発・生産のプロセス/流通・顧客 の情報価値による変革  俯瞰図

 

 

 

8月28日(火) 

10:00 ~12:30

❐第16回MOT研究会 開講  オリエンテーション

内閣府発表の3月景気動向指数に基づく基調判断は「改善を示している」と据え置かれ、戦後最長の「いざなみ景気」(02~08年、73カ月間)に次ぎ、安倍政権発足以来の景気拡大局面は64カ月に及ぶ一方、1~3月期実質GDP成長率は前期比年率換算ベースで9四半期ぶりに減少に転じる公算が高く、景気反転の観測もあります。足元では、企業の純利益が2期連続で過去最高となったことを背景に雇用環境も大きく改善しているものの、それを実感できない個人や企業も多いようです。

グローバル化が進んだメガコンペティション環境では、個別企業の優劣が常に問われ、マクロとミクロの実感の相違は今後も解消されないものと思われます。

それは「失われた20年」と呼ばれる間の日本経済で一体何が起こっていたのかを振り返れば概ね理解できます。資本主義経済で唯一価値を創造する主体である日本の企業力はどのように変化したのか。試みにミクロの企業経営をマクロ経済との繋がりで振り返り、日本経済、企業の抱える課題と今後の在り方を皆様と一緒に論議します。

   講師   JCTM 理事  鈴木寛純

 

13:30~17:00

❐課題提起 『電動化と知能化が拓くインテリジェントモビリティの時代』

人や物の移動を司る移動体の普及が、近代社会の基礎を作り上げてきたが、移動距離が増えることで直面する4つの課題(、エネルギー、温暖化、事故、渋滞)は、大きな社会問題となっています。日産自動車は、人々をよりよい世界に導くため、「ニッサン インテリジェント モビリティ」をビジョンにしました。それを支える”電動化・知能化“について、その背景となる技術の進化を共有し今後の方向について論議します。初めに、最新技術を導入した新型「日産リーフ」の電動化・知能化技術を詳細に解説し、さらに、自動運転技術については、現在の最新開発状況を共有するとともに、将来に向けた課題を論議します。最後に、今後の重要な技術的進化、所謂「シンギュラリティ」を共有し、それらがもたらす大きな社会変革、例えば2050年の車社会を洞察します。

講師  日産自動車株式会社   フェロー   久村春芳 様

 

18:00 ~20:00

❐懇談会  自己紹介 ・ 第16回MOT研究会 抱負 など

 

 

8月29日(水)

  09:00 ~12:30

❐課題提起 『自動車を革新する新技術と市場の動向』

電気化と自動運転化、コネクテッド技術およびカーシェアリングは自動車技術と自動車産業を根本から変えようとしています。それを好機ととらえた中国政府は市場動向に合わせ、補助金制度を刻々と変化させて産業、市場をコントロールし、中国自動車産業の競争力強化を狙っています。中国市場への依存度が高まりつつある既存の世界の自動車メーカーがこれらの変化への対応に奔走する一方、中国のテックジャイアントと呼ばれるIT企業の潤沢な資金支援を受けた電気自動車ベンチャー達が活発な活動をしています。激動する自動車技術と自動車市場に関して述べます。

講師  JCTM 理事 東京アール・アンド・デー株式会社

                                                名誉会長 小野正朗 様

 

13:30〜17:00 

❐ ボッシュ株式会社のインダストリー4.0への取り組み

ボッシュはインダストリー4.0を推進する主導メーカーの1つであり、ドイツはもちろん日本を含む各国企業 との連携も積極的に進めています。また「インダストリー4.0」プラットフォームと「インダストリアル インターネット コンソーシアム(IIC)」の技術規格をつなぐ取り組みにも着手しており、ボッシュの幅広い活動に関する紹介からインダストリー4.0の本質につき論じます。

講師  ボッシュ株式会社 RBEI/SAM  Country Manager    

                                                     Mr.Kaushik PAL 

 

 

17:15~18:30  

❐全体討議 

28-29日 2日間の講義のまとめ 感想・気付き・意見交換など 

 研究会参加者  JCTM役員

 

 

 8月30日(木)

  09:00~12:30

❐ 課題提起  『FA制御機器の知能化とエッジコンピューティングの連携によるトータル生産性の向上』             

FAにおけるIoTの進化は工作機械業界が牽引し、1986年に発売された三菱電機CNC:M300シリーズは世界初の2bitCPUを採用し、サーボアンプもDSPによる完全デジタル制御を確立しました。マシニングセンタの性能評価法もデジタル化され機械・電気系双方の進化に貢献しました。サーボ系ネットワークは、高速高精度化や機械の複合化に対応するため急速に高速化が図られ、CNCと汎用サーボ共通の光ネットワークSSCNETⅢは、ナノ精度位置決めや各種機械補正制御を実現しました。当社では、進化したFA制御機器と自社開発SCADA(SA1-Ⅲ)を組合わせることにより、生産現場の変化を見える化し、原因分析や予兆診断機能を加えてダウンタイムや無駄の削減を支援しています。SA1-Ⅲは、昨年度設立されたEDGECROSS Consortiumの認定製品です。本システムを活用してロボットを中心にリモート監視を行い、予知保全事業化を確立することでサービス領域拡大と工場のトータル生産性向上への貢献を目指します。              

講師 三菱電機システムサービス株式会社

                            常務取締役 機電本部長  加知光康 様

 

 

13:30~17:00

❐課題提起  『SAP』

前回の「わが国の企業はなぜ負けたか」の関連でSAPの話を伺う。ERP基幹システムは、2000年以降 Industrie4.0に関連して大きく拡大し、産業における情報化の基盤となるプラットフォームを構築。企業向けにカスタマイズはしない―多数の企業が要請してきたら組込もう=基幹システム=事業の拡大と収益確保になります。スタンフォードのイノベーションマネジメントわが国の発想・事業化とは大きく相違します。

講師 SAPジャパン バイスプレジデント

                            自動車産業統括本部長   小寺健夫 様         

 

19:00~21:00

❐課題提起  『Round  the Table  Meeting』                           

企業・事業の既成概念の払拭・活性化には異業種との接点とコラボレーションが必要です。多業種にわたる方々が参加する研究会の機会を捉え相互情報交換・意見交換を行います。

 

 

8月31日(金)

 09:00~12:30

❐課題提起  『3Mにおける知的財産の力』

3Mは、1つのアイデアを次のアイデアや用途に結びつけるイノベーションの連鎖により、ユニークで役に立つ新製品・ソリューショ

ンを生み出してきました。現在、世界70以上の国と地域において、産業関連から生活関連に至るまで約55,000種類の多彩な製

品・サービスを展開しています。この原動力は、3M独自の企業文化のもとで育まれた自律的で創造的な研究開発活動、および3

Mが得意とするテクノロジープラットフォームを活用したビジネスモデルにあります。このような研究開発活動、ビジネスモデルをグ

ローバルで推進する3Mにとって、知的財産はビジネス成長のために必須のものとして位置づけられています。3Mの成長を支え

る知的財産の力について、お話しします。

講師 スリーエムジャパン株式会社 知的財産部 部長  

                     赤澤太朗 様

 

 

13:30 ~16:00

❐ミニシンポジウム『テーマ わが国のイノベーション ―今後の技術経営はどうあるべきか―』

課題提起  『ゲームチェンジに繋がるイノベーション』        

「競合する国や企業による様々なゲームチェンジの仕掛けが潮目の大変化を招く可能性が高い時代」を生き抜くためには,「ゲーム

チェンジに繋がるイノベーション」を忘れてはなりません。「過去の富士フイルムにおける事例を踏まえた複数の切り口からの考察」

および「技術による価値創造に関する考察」をベースに「ゲームチェンジに繋がるイノベーションへ」の挑戦に有用なヒントの抽出を試みます。デジタルX線診断システム(FCR)・画用カラーネガフィルム(A250)・写ルンです・常用可能ISO400カラーネガフィルム(SHG400)・WVフィルムなどを取上げ、技術進歩の加速/複数の技術の組合せ/システム設計など、技術による価値創造に関する考察の対象とします。ともに考えて議論のトリガーとするべく考察します。

 

課題提起  『新製品開発と新規事業創出』

日本はバブル経済崩壊後、長期停滞期に突入し未だに浮上していません。企業の業績、特に製造業の業績は、ヒット商品が生まれるか否かによって大きく左右されます。第四次産業革命やIoTが今後の企業経営に大きな影響を与えると言われていますが、第四次産業革命構想やIoT概念は、それだけではヒット商品になりません。技術経営のメインテーマであるヒット商品の開発と事業成功の条件をイノベーションマトリックス〔IM〕分析によって考察し、企業業績を大きく向上させる新製品開発活動とは何かを明らかにします。新製品が成功は、「狙いの品質」であり、技術の優劣や製品が具備する「出来栄えの品質」ではありません。リコーのMMP(マルチメデイアプリンタ)開発とアップルのiPod, iPhoneの開発事例研究から議論しヒット商品を生出す重要な要件を整理します。

                             

パネリスト  JCTM 理事 坂巻資敏 様    

       JCTM 理事 池上眞平 様