第12回 2016年8月23日〜26日開催

技術立脚型経営を考える  プログラム

 

『産業革命は起こるのか? その時企業は・・・PART2』

 

         ▧▧ Part 3 Industrie4.0IoT  と 経営 ▧▧

 

現在、我が国の産業の置かれた地位はGlobalizationの適応能力の相対的劣位と特に台湾・中国を中核とする新産業の台頭の変化に翻弄されてきています。併せて、2011年より検討を開始したドイツの提唱するIndustrie4.0産業革命への関心も、技術力を梃子にした産業の再活性化に関する関心も高く、所謂経営環境の変化という転換点で如何に新たで優位な競争的地位を獲得できるのか、経済成長戦略の基本命題になっております。

国際派も多い我々”技術立脚型経営研究会“でも産業を取り巻く大きなウネリを前に如何なる技術経営を志向すべきか、中心的研究課題として設定してきました。勿論、伝統的技術経営課題であります競争戦略のあるべき姿や、その要素でもある標準化やオープン化、そして産業構造の横展開などの技術経営要素の研究の重要性は下がった訳ではありません。しかしIndustrie4.0の産業革命は、これらの多元的技術経営要素を包含した所謂、国力の相対的革新力が問われているという認識から、伝統的技術経営要素をサブの課題に置き換え、主題を「産業革命」に置くことに再定義し、同時進行中の自動車パワートレインや、多様過ぎる新エネルギー関連技術の支配モデル支配への研究も同時に進めることに致しました。

前者の産業革命はドイツでの諸活動に関するドイツ人を対象としたヒアリングや各企業の産業革命への挑戦など調査を進める段階で、幾つかの疑問も浮上してきております。 ⑴産業革命と呼べるに値する技術要素はAIなのか、 ⑵ドイツで志向しているように製造業を核とした革命なのか、 ⑶米国で進行しているIoTとの性格的相違を如何に解釈すべきか、 ⑷最近の米独の連携活動はドイツのIT技術に関する競争劣位が原因だと断じてよいのか、 ⑸本質論としてドイツのIndustrie4.0IoT或は米国のIICとは視点の相違だけで産業革新の本質には相違が無いものなのか、 ⑹産業革命の進行事例の産業横断的広さが故に産業革命と呼称しているだけなのか、などなど多くの疑問が討議されてきました。

JCTMでは、この種の多くの疑問に回答を出すべく、20152月、8月そして20162月と研究会を重ねて参りましたが、未だにその実像に辿りついてはおりません。

20168月のMOT研究会でも、同様の視点で更に研究活動を深めることを決意しました。今回は ⑴経済産業省の産業政策企画の説明を頂戴し、 ⑵核となるであろう要素技術と位置づけられるAIをはじめとする新技術の事態を探り解明、 ⑶IoT或はIndustrie4.0へ接近を志向している多くの応用分野より核となると定義できる応用事例を抽出して、MOT研究会のプログラムを構成致しました。

われわれJCTM研究会のメンバーだけでなく幅広く企業からの参加を求めて、直面している産業革命の実像に迫り、解析し、新たな産業革命への対応戦略の討議・検討を致したく、皆様のご支援をお願い致します。

                                    (技術立脚型経営研究会 理事長 許斐 義信)

 

《 第1回 MOTセミナープログラム概要 

 

8月23日(火)

❏オリエンテーション   10:00~12:00

 『技術経営論と産業革命』

 

人、モノ、金だけではなく情報も技術も企業活動の経営資源であると気付いて

から開始した技術経営論(最初は技術経営論)ですが、特に技術は単なる経営

資源だけではなく、ある時はモノやサービス同様に顧客と価値交換するという

意味で所謂”製品“であるし、昨今の国際競争を見た場合、極めて重要な競争

戦略を差配する力と知恵ともなる。その影響は良くオープンかクローズかという

二律背反的に技術戦略の選択を迫る主張も少なくはない。

新たな産業革命は技術領域を超え、また事業領域も超える特性を内在してい

るから、本質論を見誤れば心理的不安にすら苛まれる。今までの我々の技術

経営(MOTともいう)を整理し、声高に叫ばれている新たな産業革命への知見

を提供する覚悟で、今までのMOT研究会で取り上げた課題を整理してみた

い。

 

 許斐 義信 技術立脚型経営研究会理事長 

                     元慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授

 

 

 ❏基調講演   13:00~15:30

『「新産業構造ビジョン」 ~第4次産業革命をリードする日本の戦略~』 

 

「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日)を受けて平成27年8月産業構造審議会に「新産業構造部会」が立ち上がり、関係省庁と一体になって「新産業構造ビジョン」策定に向けて検討が進められ、平成28年4月27日中間報告がまとまった。そのコンテンツ、サブタイトル~第4次産業革命をリードする日本の戦略~ について、内容を経済産業省より解説をいただくとともに、参加の皆様と論議をいたしたい。 

 

 濱野 展幸 様  経済産業省 経済産業政策局 産業再生課 企画官  

 

❏課題提起   16:00~18:30

『本研究テーマに関する総論的論議』

 

「基調講演」をうけてMOT研究会としてIndustrie4.0 IoTの動向を踏まえてわが国産業のあり方・取り組みに関して総論的な意見交換を行う。

 

『インダストリ4.0時代のIoT 』

 

インダストリ4.0においては、IoTはこれからの製品開発を進める上で中心的な役割を担うと考えられている。IoTが製品開発に限らずビジネスの様々な局面において重要な役割を果たすようになっていくであろうことは広く認識されているが、しかし、それが具体的に何が出来るようになればよいのかということについては、必ずしも明確であるとは言えない。本講演では、IoTを活用するためにはビッグデータやAIの技術が不可欠であることを事例をもとに示し、IoTが仕事に役に立つようためにはどんなことをしていくべきかを説明する。

 

 佐藤 敏明 様  株式会社リコー 新規事業開発本部  技師長

 技術型経営研究会   役員 参加者全員 

 

 

❏懇談会     19:00~21:00  

                 自己紹介 MOT研究会参加への期待

       技術型経営研究会   役員 参加者全員  

 

 

8月24日(水)

❏課題提起   09:30~12:00

『AI(人工知能)の発展と産業構造変革へ与えるインパクト』

 

近年、人工知能は急速に発展、実用化が進み、産業にも大きなインパクト与えつつある。本講演では、改めて人工知能とは何か、今後どのように発展していくのかを概観する。また、単に個別企業の活動への影響にとどまらず、AIやIoTなど最新のICTが産業構造変革に与えるインパクトについて議論したい。 

 

 山田 敬嗣 様  日本電気株式会社 中央研究所  理事

 

❏課題提起   13:00~18:30

第1部  『電気自動車の最新動向』   13:00~14:00

 

Tesla Model3が今年(2016年)3月31日に発表され、その後数日で30万台以上の予約がはいり話題を集めた。

価格35,000ドル程度、航続距離は345キロと発表されており、発売は2017年末から2018年初めと予測されている。その発表に先立ち2016年1月7日、ラスベガスで行われたコンシューマーエレクトロニクスショー(CES)においてGMは純電気自動車シボレーBOLTの発表を行ったが、BOLTは政府の補助金7500ドルを受ければ30,000ドルで入手可能といわれ航続距離は320キロ以上とされ、2016年末には発売されるといわれている。EVベンチャーのTeslaとアメリカ最大の自動車メーカーGMが大量生産前提の電気自動車でまともにぶつかり合う形になる。TeslaはModel3の航続距離と価格を両立させるためにギガファクトリーと呼ばれる自前の巨大電池工場をパナソニックの一部出資を受けて建設中であり、相前後して韓国・台湾・中国企業がそれぞれ巨大電池工場の建設に着手しようとしている。急激な変化を遂げつつある電気自動車業界の最新動向につきお話しする。

 

 小野 昌朗 様  株式会社東京アール・アンド・デー

                          代表取締役CEO 

 

 

第2部  『自動運転の実用化と将来展望 』   14:00~16:15

 

自動運転の実用化のためには、正確に周囲の状況を読み取り、安全で的確な判断を行い、すばやく正確に移動する「知能化技術」がキーテクノロジーとなる。本講義では、自動運転の目的や開発状況について実験映像などを交えてビジュアルに解説する。特に一般道における自動運転実現の課題である「信号認識技術」について、課題]や解決方法などを実際の事例に基づいて説明する。また自動運転の今後の展望などについても言及する。

 1.「自動運転」の目的 ~何のための自動運転か?     

 2.「自動運転」の開発 ~何を自動化するのか?

 3.「信号認識」の課題 ~なぜ信号認識が難しいのか?  

 4.「信号認識」のための技術 ~どうやって信号を認識するのか?

 5.「自動運転」の実現 ~どんなシーンに対応できるか? 

 6.「自動運転」の実用化 ~どのような実験を行っているか? 

 7.今後の展望 ~どのような近未来が待っているか? 

 

 安藤 敏之 様  日産自動車株式会社総合研究所モビリティ・サービス研究所

        シニアリサーチエンジニア

 

第3部  『自動運転システムの現状・課題と技術動向』  16:15~18:30

 

車両制御システムの高度化において、自動運転の実現は通過点に過ぎず、真の価値はその先にある。しかし、自動運転の実用化の成否によっては、車両制御システムの研究開発の方向性が大きく変わる可能性がある。本講演では、10年以上にわたり、自動運転をはじめとした車両制御システムの研究開発に携わってきたアカデミア研究者が、自身の知見を軸とした独立的な立場で、車両制御システムの構築技術について事例に基づき解説しながら、自動運転を中心とした当該分野を取り巻く現状と課題、今後の技術的方向性について論じる。

 

 小木津 武樹 様  群馬大学大学院理工学府  知能機械創製部門助教 

    (兼務)東北大学未来科学技術共同研究センター リサーチフェロー

    (兼務)産業技術総合研究所 人間情報研究部門協力研究員 

    (兼務)産業技術総合研究所 知能システム研究部門 協力研究員

 

❏グループ研究     参加者全員

 

 

8月25日(木)

❏課題提起   09:30~12:00

『画像医療システムの歴史とIT活用の課題と将来』

 

19世紀末に発明されたX線写真は画像医療の中心的存在である。そのデジタル化は富士フイルムがコンピュータ黎明期の1975年にゼロベースの基礎研究から始めて1983年に商品として実現した。デジタル化の流れはX線写真にとどまらず、すべての画像診断システム、さらには医療機器全体に及んでいる。デジタル技術は急激に進化し、価値の変革多様化が起きた。ハードウエアはコモディティ化し、ソフトウエアとICTが価値を生むIT革命である。日本は、少子高齢化に伴って世界に誇っていた医療システムが深刻な崩壊の危機に直面している。健全な医療なくして医療産業は成り立たない。IT革命が新たな段階に入り、ビックデータ・AI・IoTなどを活用した新たなサービスや産業の創出が叫ばれているが、その実現のためには、行政をはじめ医療界・産業界が共通認識を持って推進を行うことが必要であろう。

 

 加藤 久豊 様  一般社団法人 日本画像医療システム工業会 顧問

         元富士フイルム株式会社 取締役 常務執行役員 

         元富士フイルムメディカル株式会社会長

 

 

❏課題提起   13:00~15:30 

『三菱電機の考えるものづくりにおけるデジタル技術の活用と、IoT』

 

IT技術の急速な進化と普及に伴い、モノづくりの世界でもIT技術を活用して生産性を向上させたり、品質を向上させたりする活動が大手企業を中心として以前より行われてきた。一方で、先進国においては少子高齢化による労働人口の減少、新興国での人件費の上昇、消費者の価値観の変化などモノづくりの環境も大きく変化してきている。その様な状況下、ドイツ発のIndustrie4.0を筆頭に、IT技術の活用を更に範囲を広げモノからコトヘの付加価値の変化、モノづくりのパラダイムシフトが提案され、それが大きな潮流となって世界中を駆け巡っている状況である。翻って、日本のモノづくりは、製造現場を中心に既にかなりの分野でIT技術の活用は進んできているものの個別の最適化の範囲にとどまり、市場や社会を俯瞰した全体の最適化の視点ではまだまだ多くの課題がある。

同時に、日本の出荷額の半分を占める中規模以下の製造業におけるIT導入についても課題があり、日本のモノづくりの強みでもある中規模企業の競争力も高めながら前述のパラダイムシフトに乗り遅れないように対応していくことが肝要である。本講演においては、このようなモノづくりにおける潮流と最新の状況、筆者の所属する三菱電機FAシステム事業でのモノづくりの考え方とコンセプトであるe-F@ctoryの紹介、更に現場で導入してきたIT技術の活用例を紹介しながら、IoTという言葉に踊らされることなく、モノづくりの本質はそのままにIT技術を活用していくことの必要性と方向性を考察する。

 

 山本 雅之 様  三菱電機株式会社 FAシステム事業本部

                                 執行役員 副事業本部長

                  兼 e-F@ctory戦略プロジェクトグループ  

                                 プロジェクトマネージャー

 

 

❏課題提起   16:00~18:30

『農業分野における開発領域の可能性と将来

                                               ~あなたの知らない農業の産業的素顔~』

 

日本人は、日本の農産物が世界で最も安全だと思っている。また、日本の農業は狭小な生産規模での農業経営のために国際競争力がないと思っている。その常識は全て間違いである。日本の産業史において、最初に海外進出を果たした産業は農業である。それは移民という形で、海外で根を張り、現地で高い評価を受けている。日本人の農業を捉える常識ほど、非常識なものはない。農業における新たな技術・ソリューションの開発領域は、相当広がりを持っており、未だその鉱脈に到達した者はいない。日本でも様々な技術開発が進んでいるものの、全てが解決するような物言いは、ほとんどがマスターベーションの域を出ていない。世界は、農業に関する技術領域が最後の金鉱脈と捉え、様々な技術領域を組み合わせ、将来に起こりうるより大きな課題に立ち向かっている。

 

 松本 武 様  株式会社ファーム・アライアンス・マネジメント

                       代表取締役

 

❏グループ研究    参加者全員

 

 

 

8月26日(金)

❏課題提起   09:30~12:00

『第4次産業革命・Industrial IoTに向けた製造業の取り組み』

 

第4次産業革命、Industrie4.0やインダストリアル・インターネット、IoTの動向と先進各社の取り組み・戦略をつかみ、新しい産業革命の時代に、どう向き合い、どう立ち向かっていくのかを考える。講義では、最初に第4次産業革命のインパクトや動向のレビューから、日本の製造業にとってのインパクト、直面する課題を念頭に、先進各社の取り組み・事例を示しながら、各社が目指すビジネスモデル変革、エコシステム戦略、プラットフォーム戦略等をつかみ、IoT時代の製造業のあり方を考えるきっかけ作りを目指します。

グループ討議では、各参加者の異なる視点から、この大きな動きにどのように向き合い、立ち向かっていくべきかを討議いただき、自社・ご自分の事業戦略・製品戦略等に活かせるアイディア・キーとなる考え方をお持ち帰りいただければと思います。

   

 中村 公弘 様  株式会社東芝 

                          インダストリアルICTソリューション社 IoT技師長

 

 

❏総括課題提起  13:00~15:30

『イノベーションの創出とマネジメント  3M』

 

第4次産業革命は起こるか否か、日本製造業は生き残れるか否か、生き残りのためのキーサクセスファクターは何か、これらは喫緊の大課題といえよう。革命の兆しは既にIOT, Industrie 4.0に見られ、グローバルにどのような変化を社会にもたらすか、各企業への影響を熟慮し、対応策を経営レベルで立案・実施しなければならないであろう。時間とともに顕在化する変化は不連続なものであり、かつ、その速度は過去になく早く、所謂ビッグバン型イノベーションが多くなると予測される。このような来るべき大変化の時代に持続的発展を達成するためには、クリステンセンの言う破壊的イノベーション能力が必須と考えられる。イノベーションはイノベーターに依存すると考えがちであるが、組織的な取り組みが先進的企業では積極的に行われている。3Mを含む何社かの取り組みを紹介し、破壊的イノベーションに必要な組織能力とは何かを考えていきたい。

 

 野津 英夫 様  技術立脚型経営研究会理事 

          元住友スリー・エム株式会社常務取締役CTO

 

 

❏修了式    15:30~16:00