技術をベースにしてそれを如何にして革新的製品に育て上げるのか、という視点で技術は競争優位性を実現するには欠かせない経営の対象である。そう考えられてきた。 しかし技術と経営との関わりは複雑でその要諦を体得すること、つまり技術をベースにした企業経営のあり方に関しては多くの、乗り越えなければならない課題がある。
①技術の二面性
人モノ金と同様に経営資源でもあるが、一方製品にしても良いし知的財産の形で他社に譲渡し他の価値との交換をすることもできる。
②階層性
競争優位な製品を生み出す源泉と視点技術、という視点だけではなく事業モデルや競争基盤を形成する為に保有する優位性を放棄し、その技術を標準化させ事業基盤形成に利用するという意思決定も検討しなければならない。
③法的担保性
技術は知的財産として法的に資産として確保する以外に、非公開にして秘匿することも代替的方法として検討すべきである。
④時間的柔軟性
経営的には長期の研究開発行為を通じて育成することが常識化しているもの、M&Aで短期に技術資産を移転することも、また可能である。
⑤経営志向性
経営スタイルでは、市場の開拓競争や新事業のコンセプト開拓競争を展開するのが一般的であるが、逆に技術資産を企業の経営基盤として、その資産を如何にして新規市場の開拓に利用するのか、と言った類の技術基盤立脚型経営もまた可能である。
⑥資産・費用性
会計面では資産性と経費性との勘定科目の選択の問題にも一定の配慮が欠かせない。また知的財産権の中には企業と個人との共有領域を明確化する必要い迫られるという意味で、価値の保有主体の多元性にも配慮が欠かせない。
⑦競争戦略構築性
特に競争戦略の策定に於いて、事業独占、数社による事業支配そして数社のグループによるプラットフォーム形成など、事業の競争戦略の特徴を大きく変えることも不可能ではない。
⑧事業モデル形成性
技術をベースにした多様な事業モデルを念頭に置いて、巧い経営を構築できるか否かは肝心な経営ノウハウとなる。
⑨機会と脅威の2面性
技術には製品や社会システムを変質させるだけの潜在力が秘められているものの、同時に社会システムを破壊させるだけのリスクも併存している。 まだまだ技術経営の真髄は開発途上である。
(2011年4月、許斐義信)
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