経営における技術の重要性を確信していた若いころ、経営学に於いて技術との関係に触れた論文が無いことから、経営と技術との関係に関する研究を開始して約30年の歳月を経過した。この間、経営資源配分を中核にした経営学は選択と集中論に代表されるように財務会計との関係での深化を遂げ、同時に経営革新論の中核としてイノベーションの源泉としての地位を確保した。
しかし後欄で述べるように技術のマネジメントの課題の多様性や多面性に深く突っ込んだ研究はまだまだ未知な領域ばかりである。完成した学問としての叡智を体得するには、余りにも未完成な課題でもある。
真に有効な技術マネジメントが存在するとしたら、現場の経験に謙虚に接し、技術というものに創造性を持って接することが不可欠であり、既存の学問体系の中で述べられている理論を会得するには未だ早計であろう。
本『技術立脚型経営研究会』は、このような認識に立脚して主として技術や研究開発に携わってきた所謂技術系の経営者を中核にして組織化した、研究会である。
研究会の名の通り、セミナー、シンポジウムそして研究会はいずれもこの未知な領域に対して解明をしたいと希求する人々により組織化された。多くの賛同者の組織への参加を期待したい。
(許斐義信)
許斐 義信 KONOMI, Yoshinobu
1967年慶應義塾大学機械工学科卒業、
1967年~1969年三菱商事株式会社、
1971年慶應義塾大学大学院工学研究科修士課程修了、
1976年同研究科博士課程修了、
1976年~1999年経営構造改革や会社再建、
1980年~1983年三井物産株式会社、
1985年~1991年株式会社コパル、
1988年~1991年中央クーパースアンドライブランド・コンサルティング顧問、
1989~96年 An advisor at CAPP of the RAND Corporation、
1972年~慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師(ビジネスゲーム)、
1995年~1996年同研究科講師(経営革新)、
1988年~同研究科講師(技術と経営)、
1999年 同研究科教授となる。
2004年~日本ターンアラウンド・マネジメント協会理事長、
2005年~Director of the Turnaround Management Association、
2006年~日本事業再生協会理事長、
2008年~放送大学客員教授、
2010年~慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授を退任。
専攻分野
経営シュミレーション 技術経営論 経営再建論
慶應ビジネススクールでの担当授業(非常勤)
経営再建論 技術経営論 ビジネス・ゲーム
主要著書・論文
『競争力強化の戦略』(PHP研究所, 2010)
『金融法務辞典』共同編集(銀行研修社, 2007)
『イノベーション経営』共著(放送大学教育振興会, 2005)
『ケースブック企業再生』(中央経済社, 2005)
『構造変革・成功の秘訣』(日本放送出版会, 2002)
『デファクト・スタンダードの本質』共著(有斐閣, 2000)
『MBAのビジネスシミュレーション』共著(総合法令出版, 1999)
『これからの日本的経営』共著(日本放送出版会, 1995)
『日本のトップカンパニー』共著(日本経済新聞, 1993)
『トランスボーダーカンパニー;日米欧3極構造の課題』(毎日コミュニケーションズ, 1991)
『高度情報化社会を見る-世界を見る目』(日経BP社, 1989)
『円高対応戦略』(日本能率協会, 1986)
『現代戦略経営の方法』共著(日本能率協会, 1985)
『素材産業再生の総合戦略』(日本経済新聞, 1983)
自主研究
技術戦略とデファクトスタンダード
企業の構造改革
会社の再建と再生