第6回MOTセミナー(2013年8月27日~31日に実施)

827日(火) グローバル経営と技術戦略 

  午前 オリエンテーション

    講師 許斐 義信 元慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授

  午後 世界No1企業に成長させた企業経営の要諦

    日置 政克(株)小松製作所 顧問 元常務取締役

 

技術立脚型経営のあるべき姿を理想形として認識しておくことは、経営推進者の位置にある人材には欠かせない要件である。国際競争に勝利し世界の市場で事業的に覇権を握るには如何なる経営が求められるのか。具体的事例をベースに参加者で、討議し、競争優位の事業体への成長シナリオを描きたい。

 

828日(水) 知財と事業モデル・競争戦略

  午前   知的財産をベースにした企業活動

    講師 加藤 幹之     Intelectual Venture 日本総代表

                                           ・元富士通(株)常務取締役

  午後   競争戦略と知的財産戦略

    斎藤  敬   元キヤノン(株) 常務取締役       

 

知的財産戦略の重要性は、その知財権確保と同様に行使戦略が益々重要になってきている。事業を守る知財戦略に関しては、本研究会での関心は高い。国際競争優位性を確保するには世界の先端技術との融和が不可欠である。これを経営学的には「メタナショナル」と呼んでいる。国際的先端技術を集約して我が国企業の不足能力を補完する機能は、特に近年重要性を増している。第1に、この種の知的財産移転に関わる企業の最前線での活動に触れる。その上で第2に知財戦略の行使的側面に着目して、例えば、クロスライセンスによる競争環境への仕掛け、技術間競争で主導する為のプラットフォーム形成、そして知財に依る競争優位性の向上、リフィルに依る事業モデル戦略の確保など多様な技術戦略を担保する為の戦略問題を討議する。また特許は係争事件を核にしてリスクに曝される事業を如何に保護するか、という観点からも、正に戦略要素である。午前、午後と2つの事例を用意し、知財戦略に関して、その高度化を達成する為になすべき課題を討議する。

 

829日(木)新規事業開発

  午前  技術立脚型ベンチャー企業成功の秘訣

    講師  出雲 充 ユーグレナ(株)代表取締役 社長

  午後  新規事業開発での成功要件

    講師  長久 厚 ラクオリア創薬(株)創業者

             元ファイザー(株)常務取締役 中央研究所長 

 

発展途上国との価格競争問題に曝されている我が国では、如何にして競争製品を越える製品と事業の革新を成し遂げるかが大きな懸案事項である。革新機構もある種、この種のイノベーションを支える目的で創設されているが、初期段階(アーリーステージ)のベンチャーファンドは実質的に機能してはいない。しかし、新たな知見を持って新規事業を興そうとする挑戦は消えている訳では無い。新規創造に値する革新は、必ずしもハイテク分野に限定されている訳ではない。事業化が可能な要件の検討など事業化側面での叡智も同様に重要視されねばならない。本講座での数件の具体的新事業案件を取り上げその成功条件を多元的に検討する。

 

830日(金)新製品開発と競争力極大化:

                                                          製品技術と生産技術との協調

  午前   品質の常態的向上、流動管理と源流管理

    講師 谷 善平  元シャープ(株)代表取締役副社長

  午後   現地見学    日産自動車(株)日産ラーニングセンター

          製品技術と生産技術 ディスカッション

                                 谷  善平   日産ラーニングセンター          

日本企業の相対的優位性に生産技術が挙げられるが、現実に製品技術と生産技術との協調で新製品を実現・成功させてきた。VCRも、前回課題で取り上げたマツダの低燃費車SkyActivも、そして自動二輪車の世界制覇戦略も、いずれもが生産技術に依る品質の高度化が競争力極大化に貢献した。これらの成果は、一見、異質な機能と看做される製品開発と製造技術開発の協調作業の重要性を無視しては達成できない。開発当初の源流管理だけではなく、製品化後も継続的な所謂、流動管理も、共に重要である。当日は先ず、この考え方に関するフィロソフィーを討議し、午後には日産自動車ラーニングセンターを現地見学し技術開発に関わる仕組み・教育や、新たな機能を開発し、それを取り込んで新製品を生みだすその人材的視点に焦点を当て、現在も我が国産業の基盤を現在も我が国産業の基盤を支えている自動車産業を例に新製品開発の組織的側面を検討したい。

 

831日(土)技術経営の成功条件

  午前  国際企業の経営者から日本企業への経営課題の提起

                                                                ―3M社の技術経営戦略― 

    講師 野津 英夫   元住友スリー・エム(株)常務取締役CTO

 

グローバル化に対する我が国企業の問題は、韓国の三星電子や台湾の鴻海精密工業などの対応事例に比較して乖離があるとする意見は多い。伝統的にグローバル化は自国での競争優位性を基盤にグローバルに事業的視点で市場開拓をするという構造を採ってきた。この種の典型的例はIBM社に見ることができる。つまり研究開発機能は本国乃至は同等の国に起き、各国の市場とは現地開発に分権化して適合性を高めるということになる。しかし、要開発技術の特性の変化から、世界の各高度技術を集約して競争優位な開発基盤を形成するとか、或いは企業間の組織を越えた開発体制の構築など多様な形態が動いている。

今回は3M社を事例として、グローバル技術経営戦略を検討する。3M社は過去55年間増配を継続している企業であり現在もエクセレントカンパニーとして評価されている。事業の内容は、170カ国、製品数は6万種類の多くを数える。このグローバル展開の基軸となっているのは、①技術の活用、②マーケットニーズの把握、③事業のポートフォーリオマネジメントである。項目ごとにその要点を記すと次の通りである。

①ダイバーシファイドテクノロジーカンパニーとして多様な技術をニッチ製品に展開している。

②世界市場を相手にしているため、市場ごとのニーズを細かく把握し「顧客要求に応える」。そのために多様な技術を自由に使えるよう共有し活用している。また、人材の登用に関してアメリカオリジンではあるが、能力本位で人材の登用を行っている。

③事業の競争力を常時評価し、競争力を維持強化するための戦略(事業撤退も視野に入れる)を展開している。

こうしたことが高い組織活力を生み出している根源であり経営像を紹介する。

 

  午後  修了式

 

(注記)本プログラムは目下、詳細に且つ具体的に課題に対応して一部講師の方と交渉中です。実行にあたっては、本プログラムは、正式版として書き換えることとなります。