第18回 2019年8月27日〜9月1日に開催致しました

テーマ『変化の時代 わが国の製造業がめざす方向はいかに・・・』 =Industrie4.0・IoTのみならず、わが国のイノベーションを論ずる=

現在進行していると考えられる第4次産業革命は、Industrie4.0あるいはIoTなどと称されているが、最近幾つかの点で再検討が必要ではないか考えられます。即ち、

 産業を支える基盤技術の変質が問われている。

、その背景を地域的に斟酌すれば寡占化した産業構造を背景に、「グローバル化を前提としている欧州」「持前のICTを基盤にした米国」そして「国家経済主義を貫く中国」など、産業革命に向けて経済的或は事業戦略に微妙な相違が見えている。

それは、金融状況が厳しい欧州、改革で先行していた大企業GEのガバナンス摩擦、そして安全保障面の陰が見え隠れしている中国、と各々に異なる障害を抱えていることが危惧される。

Industrie4.0 IoTで検討してきた各種の要素技術は、単に既存業務に置換わることや付加されることもあるが、既にコンポーネントとして成立して、新たなモジュール事業や部品としての活用段階のもの、新たな要素技術に特化し新産業として誕生するであろうもの、そして付随的に変化して新たな要素技術に特化した産業の勃興など、多様な産業や事業の変化が発見されているものの、その利用価値に配慮した製品の価値変容は必ずしも想定した通りには進んでいない。

4、Industrie4.0Io Tで提起された技術革新の進行は、医療と機械産業では異なった変化を遂げる可能性も指摘され、産業領域に関わらず、産業組織の変質が迫られるようなケースも頻繁に見られるようになっている。

5、Industrie4.0 IoT ではその基本的概念としてCyber Physical System Digital Twin

 

 

を全体イメージとして定義している。それが産業分野あるいは各業態においてどのような新たな展開になり商品化されていくかは、必ずしも明解にはなっていないと考えられる。

こうしたなかでわが国の産業革命は、どのように志向すれば今まで培ってきた技術と革新を基盤にして作興することができるでしょうか。

 

今回のMOT研究会ではこの種の産業革命の広がりと多様性を斟酌して、変化の兆候が見られる事例を捉え、参加者と共に経営と技術或は技術イノべーションの広がりと限界を検討する場を設ける意図で、可能な限り視野を広げて検討し論議いたしたいと希求しております。

この企画を抽象的に再整理すると、“イノベーションに着目した企業活動の変革”と如何に関わり、どのように取り組むのかを検討するという経営的視座が重要だという考えに辿り着きます。

この時、単に限定的かつ固有の基盤技術の変革に着目するのではなく、イノベーション群或はイノベーションの連鎖にも検討の範囲を拡大していく努力にも触れてまいりたいと考えております。

技術立脚型経営研究会)

 

 

 

8月27日 (火) 

❐開講        10:00~11:00   

第18回 MOT研究会  開催にあたって  挨拶・オリエンテーション 

 『第18回 MOT研究会の全体像  改めてわが国産業の本質を問う』         

JCTM理事長  許斐義信  様

 

❐課題提起   11:00~17:00 (昼食 12:30~13:30 )

  近年、地球温暖化やグローバルとローカルな問題のほか、日本国内では高齢化や人口減少など、わが国の産業構造大きな変革期を迎えている。このような状況の中で、Industrie4.0やSociety5.0など新たな産業政策も国内外で進められている。今回、本研究会の開始にあたり、この変化の時代における、わが国の製造業がめざす方向について、「1、変化の時代の製造業」では日本の製造業の変遷と今後のトレンド、「2、欧州企業に見る産業構造改革後の事業戦略」ではドイツのシーメンスAGの成功事例について議論を進める。

 

1、変化の時代の製造業 (11:00~12:30、13:00~質疑)

わが国の製造業を取り巻く環境は、温室効果ガス削減やグローバル化などによる産業構造の変化や国内の労働人口減など、従来の延長線上では考えられない大きな曲がり角に来ている。

このような時代を俯瞰するために、現時点から20年~30年先の未来予測、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)や製造業におけるオートメーション化・コンピューター化を目指す技術的コンセプト(Industrie4.0)、日本が提唱する未来社会のコンセプト(Society5.0)などの動きも参考に、現在の製造業の課題について考える。

        講師   伊東 章雄 様      JCTM 理事      JCTM理事 

   

2、欧州企業に見る産業構造改革後の事業戦略 (14:00~16:00  16:00~質疑)    

  『抜本的な事業の立直し 成功の秘訣  ドイツ シーメンスAG(シーメンス・アフター)』  

総合電機企業(重電事業・半導体事業・情報通信事業)から、1990年代2度の事業構造改革を経て2007年以降「トランスフォーメーションを行う時期」とし、大胆な事業売却と買収を繰り返し今日に至っている。その尺度は「技術」であった。

 

講師   許斐 義信 様     JCTM 理事長  (元慶應義塾大学大学院教授) 

 

    

❐懇談会   18:00~20:00                        自己紹介 参加者抱負 など 

 

 

 

8月28日(水)

❐課題提起   09:00~12:30 

『欧州独立エンジニアリング会社の歩みと取り組み』

1948年に、ハンスリスト率いるディーゼルエンジン設計開発の専門家チームが、ディーゼルエンジンの設計開発サービスを開始しました。その後70年で、売上げ高20億€、従業員は10,500人の規模の企業となりました。売上高は、過去20年の間に約10倍、従業員数は、過去5年間で約4,000人増えました。また、早くから海外進出も進め、日本にも1995年に日本法人であるエイヴィエルジャパン株式会社を設立しました。

 本講義では、企業発足から、現在までの歩みと取り組みを紹介します。歩みの中では、弊社がどのようにして成長してきたか、また成長を作り出した要因について私見を述べさせて頂きます。また、弊社の現在の取り組みでは、取り組みの前提条件である欧州規制動向や現在急激な電動化シフトによる課題についても説明します。

        講師    野寄 高宏 様    AVL エーヴイエルジャパン株式会社 副事業部長 

パワートレインエンジニアリング事業部 

                                                       

❐課題提起  13:30~17:00  

  『選択と集中による開発革新  ~貧乏も悪くない~ 』 

マツダは1990年代バブル経済崩壊、2008年リーマンショック等でたびたび危機を迎えた。そんな中でも今までにないほど厳しい燃費規制などは待ったなしで迫ってきていた。他社はハイブリッドや電気自動車などを開発し万全の準備をしているがマツダには将来に向けて技術を開発する人間が大幅に不足しており他社のような対応は到底とりえない。そんな中で我々がとったのはマツダ流の選択と集中である。これは多くの選択肢の中から良いのを一つ選んで対応するというのでもなく、多くの課題に通じる共通課題を見つけそこに集中するという考え方である。これをボーリングに例えて一番ピンを見つけると呼んでいる。技術開発、プロセス革新などあらゆる局面でこの考え方で対応してきたのでそれを紹介する。また世間で環境技術ともてはやされているものに対する問題提起を通じて内燃機関の重要性に言及する。

      講師    人見 光夫 様   マツダ株式会社   シニアイノベ―ションフェロー    

 

 

❐自由研究(案)19:00

 企業・事業の既成概念の払拭・活性化には、異業種企業との接点とコラボレーションが必要です。多岐にわたる業種の企業が参加する研究会の機会を捉え相互情報交換・意見交換を行う。

 

 

 

 

8月29日(木)

❐事業所見学 09:30~12:00 (フォーリッジ 発07:30  着13:15)

『スリーエム・ジャパン株式会社  相模原 3M CTC(Customer Technical Center)』  

       予定 09:00 CTC概要  09:30~11:00見学 (2 班)  11:00~12:00 質疑応答

  CTC(Customer Technical Center)はお客さまの技術的問題の解決をめざし新たなつながりを生み出しユニークな成果をもたらすことを目的につくられたソリューションセンターである。3Mの50,000種類に及ぶ製品とその開発力のべースとなっている40を越えるテクノロジープラットフォームを統合し、お客さまの目的・要望に合せ事業・業界に最もマッチした解決方法を共創する。   

(抄 スリーエム・ジャパン株式会社 カスタマーテクニカルセンターのご案内より掲載)

                    

講師  CTC センター長、CTCスタッフ

                                                         

                                  

❐課題提起 13:30~17:00

『イノベーションの連鎖   スリーエムと富士フイルム イノベーションへの挑戦心・勇気・信念』

わが国は90年代に入り、経済において欧米に並ぶトップランナーの一員となったが、バブルの崩壊とともに世界の経済発展から一人取り残され、失われた30年を迎えるに至った。巻き返しを実現するには諸々の経営改革が必須であるが、その中核を成す一つが、差別化された新しい事業価値創造を目指すイノベーションへの挑戦である。しかし、短期的な帳尻合せを過度に重視し、市場変動に対応する長期視点を欠いた管理型経営、その結果として主体的な挑戦を躊躇する安全志向が少なからぬ企業で蔓延し、イノベーションへの挑戦を阻むさまざまな壁が形成されたように見える。その壁を打破し大小の多様なイノベーションの波の更なる高まりと重なりによる共鳴創生が,日本経済再生のために製造業ができる貢献である。「銀塩感光材料衰退への対応に挑戦している富士フイルム」「成長の持続に苦闘・挑戦している3M」の事例を参考に眠っている巨大な潜在力を顕在化し、変革・イノベーションへの挑戦をいかにすべきか、複数の視点より共に考えたい。

 講師  池上 眞平 様 JCTM理事(元富士フイルム株式会社 取締役常務執行役員)

 講師  野津 英夫 様 JCTM理事(元スリーエム株式会社  常務取締役CTO) 

 

 

❐全体討議または自由研究 (案)19:00

企業・事業の既成概念の払拭・活性化には、異業種企業との接点とコラボレーションが必要です。多岐にわたる業種の企業が参加する研究会の機会を捉え相互情報交換・意見交換を行う。        

 

 

 

8月30日(金)

❐課題提起  09:00~12:30

『持続可能な社会と産業の再構成へ向けたエネルギーの在り方   石油産業からみたエネルギー供給の課題』

地球温暖化対策として脱化石燃料への挑戦が続く。燃費改善やEV化で輸送用燃料の需要が伸び悩む一方でジェット燃料は堅調という見方もある。石油は連産品であり特定の製品だけを作ることは難しい。1次エネルギーであり、化学原料である石油をどう使うべきか、日本のエネルギー需要と石油産業の歩みを振り返りながら、連産品としての石油はどうあるべきか、関連課題を多面的に議論したい。

 

講師   伊井 憲一  様    出光興産株式会社 統合推進室 主席主任部員       

   

❐課題提起 & 全体討議 13:30 ~16:00

 『変化の時代 わが国の製造業のめざす方向はいかに・・・』

 「企業は環境対応業」「社会的な存在」「お役立て業」と言われる。2019年7月現在の予測によれば、製造業各社の業績も減益となる見込みで好況感はなく、GDPのデータも期待できない。近年の歴史では、マクロ経済は「円の切上げ」や「石油危機」に直面しても、幾多の変化にも柔軟に対応してきた。この先の20年を考えれば、変化は今までとは異質なものであろう。わが国が成長をめざすために、「中・長期的な視点に立ち、原動力であるテクノノロジーの作興と育成」に新たな挑戦をしていくことが必要であると考える。今回の研究と論議を今後とも継続してまいりたい。              

 許斐 義信  JCTM 理事長

 鈴木 寛純  JCTM 理事 

 

 

❐修了式 ・閉講 16:00 ~ 16:30