技術立脚型経営を考える プログラム
『産業革命は起こるのか? その時企業は・・・PART2』
◆2016年2月 プログラム設計における主題テーマの概説
技術立脚型経営研究会では、今後の技術経営戦略のあり方を探求しながら課題の定義に関する議論を積み上げてきていた。2015年春にドイツで開催されたハノーバー・メッセでの討議内容も、米国で進行しているIT革命の次世代対応をも観察しながら、議論の焦点を探ることに注力を傾注してきた。
2015年8月の第10回MOT研究会では、同年2月に実施した多様な技術開発で将来対応の帰結に問題意識を持つ、自動車産業でのパワートレインに関する代替技術が、棲み分けとなるのか、過去からの技術経営的研究の帰結である支配モデルに収斂するのかを討議の遡上に載せた。つまり2015年8月のMOT研究会ではドイツ流のIndustrie4.0を先ずは粗上に載せて研究会のテーマを構成した。討議概要は、欧州発電機企業シーメンスとABBとの事業モデルの相違に端を発し、ドイツでIndustrie4.0革命を推進しているNRWから、IT産業富士通でのIoTの取り組みを押し進めているアドバンスト・テクノロジー社より、その推進の先導役である同社社長に具体的内容を披歴いただき、ITとハードとの連携に依る革新の現実を取り上げ、討議を行った。後半は、三菱化学殿の新規事業への戦略展開現場の見学を挟み、中部圏で進められている産業クラスターの形成への挑戦をデンソーでの活動を中心に視野を変えて検討した。また技術革新の先導企業でもあるIBMと半導体機械で最大のアプライド・マテリアルの米国企業2社からは、本講座の趣旨である産業革命は起こるのか、如何にして産業革命へ向けて企業活動は挑戦すべきなのか、その実像を披歴頂き、MOT研究会を終えた。
その後、2016年2月の第11回MOT研究会で取り上げるべき課題に関してJCTM内で数度の議論の末、再度Industrie4.0を俎上に載せて精査すべきという結論に至り、本講座を企画した。その概要はバイエルン州からもIndustrie4.0への挑戦の姿を更に精査すべきであるという関心から、検討を進めるという他、その産業革命に接近している我が国企業を取り上げ、その挑戦の実像を体現したいとの意見から、コマツ、3Mそして電子機器で世界の支配モデルを既に形成している村田製作所、更には政府の立場で、その視点をもって活躍し研究を進めておられる稲田教授にもご登場しただくことを要請し、快諾を得た。
最後になるが、この産業革命のもうひつとつの視点である知的財産戦略を弁理士であられる丸島儀一様よりの知見を得て、参加者全員で、今後の技術開発と事業開発そして産業革命への取り組みをテーマに据え、議論を中心に、今後の在り方を検討することにした。
これが2015年2月、8月のMOT研究会の内容の中で、2016年2月MOT研究会と関わりのある視点で解説させて頂いた経緯であり、JCTMからの提案である。
問題意識を持って挙って参加頂くことを提案したい。
《 第11回 MOTセミナープログラム概要 》
2月23日(火) 10:00-12;30
◆ 開講式 オリエンテーション 『技術経営論の意義』
技術は経営に於いて多様性がある。つまり事業の基盤を支える“経営資源”でもあり、技術を核として事業プラットフォームを形成し対価を得るという意味で“製品”でもある。また技術間・事業間の競争が繰り広げられている状況では、標準化のためにオープン性を求められる場合があるが、一方では製品の差別化を担保するためクローズド性が要求される。その観点からは多元性を持っているとも言える。技術が持つ多様性と多元性は、技術を事業的視点でマネージすることに柔軟な発想を求めている。MOT講座で検討してきた知見を整理し講座の意義を提示したい。
許斐 義信 技術立脚型経営研究会理事長
元慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
◆課題提起 14:00-17:00
『ドイツ バイエルン州における製造業を中心とした
Industrie4.0への取組み』
ドイツで提起されている産業革命Industrie4.0は政治の形態が連邦であることから州別に異質な視点で、本Industtrie4.0が進められている。特に製造業で国際的地位が高いバイエルン州でのIndustrie4.0への取り組みに関する政策は、製造業主体で産業革命を希求している我が国にとっては見逃せない動きである。
バイエルン州 駐日代表部代表 Dr.Geltinger 様
◆懇親会 18:00-20:00
自己紹介・MOT研究会参加の抱負 等
2月24日(水)
◆課題提起 09:00~12:30
『コマツにおける技術をベースにした経営構造改革』
現在声高に叫ばれているITとモノの融合をベースとした産業革命は、シリコンバレー型のIoT、GEなどが提起するIndustrial Internetの動きも無視できない。後者では既に我が国建設機械企業のコマツは社内外つまりNetを駆使した営業革命と自動運転でも先行している。同社の事例からサービス機能や生産機能の高度化への挑戦の可能性について検討したい。
迎野 雅行 様 コマツ 執行役員商品企画本部長(兼)開発本部副本部長
◆課題提起 14:00~17:30
『日本企業の国際競争力とモノづくりのイノベーション』
稲田教授は政府の立場で企業や産業の在り方を見てきた。同氏は更に海外での経験をも活かし、短なる政府の立場を離れ研究者の立場で、その視点を整理してきた。同氏による、本産業革命を如何に取り組むのか、それを検討する場にしたい。マクロとミクロつまり政府と企業との連結の特性から本産業革命の在り方を検討したい。
稲田 修一 様 東京大学特任教授
2月25日(木)
◆事業所見学 09:30~12:30(08:00 集合 バス配車)
『基盤技術による革新企業 3M』
進行すると期待されている産業革命は何らかの形態で企業に経営革新を迫ることは明らかである。イノベーション経営で著名な3Mでの潜在顧客と潜在技術とのワークショップ型の開発の場を見学し、如何にして世界へ事業が拡散しても所謂インテル・インサイド的意味で村田製作所の成果は、重要な革新の成功事例である。
スリーエム ジャパン株式会社
相模原事業所 カスタマーテクニカルセンター (CTC)
◆課題提起 14:00-17:30
『電子部品メーカーとしての村田製作所の技術経営』
我が国で国際競争に曝され経営的に不振する中で同社は世界支配モデルを確立している企業として稀有な立場にある。産業革命を揺るがすITとハードとの融合は、その事業展開がグローバルであることも主要な条件でもある。如何に世界へ事業が拡散しても所謂インテル・インサイド的意味で村田製作所の成果は、重要な事業革新の成功事例である。
岩坪 浩 様 株式会社村田製作所 技術・事業開発本部本部長 常務執行役員
2月26日(金)
◆課題提起 09:00-12:30
『情報テクノロジーにおける新しい潮流』
新たな産業革命で我が国企業が最も劣位であると危惧されている経営要素は知的財産戦略と言われている。標準化・インターフェースの支配・競争力の支配などは今後企業が高度化を迫られている経営要素である。キヤノンの知財戦略をはじめ大学での研究そ弁理士としての知見に長けた丸島先生にその知見を披歴頂く。
丸島 儀一 様 弁理士
◆課題提起 14:00~17:30
グループディスカッション
IoTやIndustrie4.0などと言われる産業革命は、産業別の特性の相違、IT産業・組立産業そして部品産業という構造的違いも重要な視点であり、個のイノベーションを推し進めるシリコンバレー・モデルと産業政策に消化したどいつのIndustrie4.0 との組織的相違にも注力する必要がある。多様な視点からグループ討議を通じて産業革命の全貌を知り、個々の企業や産業を勘案して、その実像を探りたい。
「論議テーマ」
①産業革命は起こるのか?
②その時、我が国・企業の戦略は?
技術立脚型研究会 理事・スタッフ
2月27日(土)
◆事例研究 09:00-12:30
『Industrie 4.0 へドイツ企業を統合した森精機の挑戦』
経営革新は、市場密着と技術を核とした差別化との両輪で達成できると言われている。個々の市場ニードよりむしろグローバルな視点で産業構造に挑戦し、世界の産業革命を先導しているドイツ企業をも取り込んだ森精機の経営をご紹介いただく。
森 雅彦 様 DMG森精機株式会社 代表取締役 (交渉中)
13:00- 修了証 授与